その他体験談


◆無知な飼育で失った命



ハムちゃんが命がけで教えてくれたこと

1999年。我が家は初めてハムちゃんを飼いました。
まだ小学生だった長女が誕生日に欲しがったのがきっかけです。
ジャンガリアンのサファイヤブルーを2匹、ホームセンターからお迎えしました。

その頃の私達は、ハムスターに対しての知識がほとんど無く初心者もいいとこでした。
自分たちのもつ薄い知識だけで精一杯可愛がってるつもりでいました。
一緒のケージで育てていた2匹のハムちゃんは男の子と女の子だったらしく、すぐに子供が生まれてしまいました。
同じ日に同じケージに入って販売されてたハムちゃん達なので、今思うと近親だった<のではないかと思います。

出産・育児に関する知識も無かった私達は、母ハムのストレスや体力のことなど考えず、出産前と変わらない
掃除のやり方や接し方をしてしまいました。
そして父ハムと母ハムをずっと同居させたままで飼育を続けていました。

出産・育児向けのご飯が与えられなかったことや、外部からのストレス、安定しない室温などが原因だったのでしょう。
子喰いが起きてしまい、生まれたときは8匹だった仔ハム達が、最後にはたったの2匹になってしまいました。
相性によっては父ハムも一緒に育児をすると言われているジャンガリアンですが、この時の母ハムにはそれも
ストレスになっていたのかもしれません。

日に日に減っていく赤ちゃんたち・・・すごくショックでした。
当時は原因もわからずただ泣くばかりで、悲しみのまま、4匹の親子ハムちゃんを見守ることしかできませんでした。

ある日、知人にこのハムちゃんたちの様子を話しました。
すると『ハムスターはそういう生き物だから』とだけ言われました。
知人は慰めるために言ってくれたのかもしれません。ですがその時の私はショックが重なり、ハムちゃん達に対して恐怖を憶えてしまいました。

子供達がハムちゃんを可愛がっている様子を見て私は『生き物を大切にする気持ちが育めているようでよかった』と勘違いする始末。
ハムちゃん達のストレスのことなど気付きもしません。
それどころか私は、前日の恐怖心から、ハムちゃんに対してそれまでのように接することができなくなっていました。

私のそんな気持ちも伝わってしまったのでしょうか・・・
産後1ヶ月を過ぎた頃、4匹のハムちゃんは皆、血を流して亡くなっていました。
無知な飼い主のせいで失ったたくさんの命。
命を落とすほどの激しいケンカをしなければならなくなった状況。
ハムちゃん達は気持ちがボロボロになるまで追いつめられていたんです・・・

私達はとても悔やみました。あってはならないことをしてしまったのです。
どれだけ謝っても許されることではありません。
ハムちゃんを飼う資格は無いのだと、自分の未熟さを振り返り自信を失くしました。
色んなところでハムちゃんを見るたびに胸がしめつけられる思いにかられ、その後5年半ペットロスになりました。
自業自得です。今でも思い出すと涙が出ます・・

PCの購入がきっかけで、ずっと心に病んでいたハムちゃんの飼育法やハムちゃんの生涯の事実、真の命の大切さを知り
再び激しい後悔に襲われました。
大切だから可愛がりたいし、1匹だと寂しくて可哀想。
スキンシップも多い方がハムちゃん達も幸せだろう。
そう勘違いしていたあの頃の私達は、本当にひどい飼い主でした。
PCを買うまで、飼育本の存在も知らなかったほどでした。

それからの私達は、ハムちゃんについてとてもたくさんの話をしてきました。
今でもそれは毎日の日課になっています。
その時の私達の深い傷を癒してくれたのは、売られているハムちゃん達でした。
もう二度と飼うまいと思っていたので、購入目的ではなく、覗きに行っていただけでした。

そんな中、たまたま入ったホームセンターのペットコーナーが気になり覗いてみました。
ハムスターのコーナーを見た瞬間、私達は凍りつきました。
小さい水槽の中にぎゅうぎゅう詰めで入れられているハムちゃん達。
床材は糞まみれ。オシッコか水かはわからないけど、一角が異常にべちょべちょ。
ご飯も1種類だけのペレットが山盛りにされていて、給水ボトルにもこけが生えて中の水が見えないくらいになっていて・・

そして、何匹ものハムちゃんが亡くなっていました。
亡くなっていることに気付いてもらえないままどれくらいの時間水槽の中に居たのでしょう。
それとも気付いてても取り出すことを面倒に思われたのでしょうか。

過去にあんな飼育をしてた私達に人を責める資格があるのかと迷いましたが、私は堪えきれず激怒しました。
あまりにもひどすぎます。可哀想すぎです・・

店員さんはしぶしぶと亡くなったハムちゃん達を取り出しました。
きっと、ちゃんと埋葬してもらうこともできないのでしょうね・・・
悔しかった。すごく悲しかったです。
良い飼い主様に巡り合え、幸せに暮らしてるハムちゃん達はたくさん居るだろう。
でも、こんな境遇のハムちゃんが後を絶たないのも事実・・・
『ハムスターが捨てられてた』
『飼育が面倒になった』
『ちょっと放っておいたら死んじゃった』
など、あってはならないことが多々起きていることに憤りを感じていましたが
だからといって私達が飼ってもいいのか?私達は飼い主として認められるほどに
なれたのか?という過去の不安から、どうしても一歩踏み出すことができずに居ました。
ですがこのホームセンターでのハムちゃん達を見たとき、私達に熱い気持ちが湧いて
きたんです。許される限り、1匹でも多くのハムちゃんを幸せにしたい。そう思いました。
今思うとなんだかおこがましいですよね。私達の方が幸せにしてもらってるんですもん。

私達は家に帰り、もう一度よく話し合って、ハムちゃんとの生活を再開することに決めました。
これから先も、10年前の傷が完全に癒えることは無いでしょう。 忘れてはならない気持ちなので、むしろそれでいいと思っています。
私達のハムちゃんとの生活の再開は『一緒に成長しようね』から始まりました。
ハムちゃんを育てながら、ハムちゃんに育ててもらっている私達。
小さな体で本当に色んなことを教えてくれます。
そのうえ言葉にならないくらいの愛らしさで日々癒してくれます。

それから今日まで、嬉しいこと悲しいことたくさんありました。
これからもきっとたくさんあるでしょう。
再開して3年。まだまだわからないことだらけです。
悔やまれることがたくさんありその度にくじけそうになりますが、『ごめんね』だけじゃなく『ありがとう』も言えるようになりました。

旅立ったハムちゃん達が教えてくれたことをしっかり胸に刻んで、今居るハムちゃん達に精一杯の正しい愛情を注いでいきたいと思います。

 

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